Home / 恋愛 / いつもあなたのそばにいたい / 第4話 本当に初めての2人きり

Share

第4話 本当に初めての2人きり

last update Last Updated: 2025-09-20 06:10:00

マンションのエレベーターで、3階まで上がる。

「じゃあ、少しだけ待っててくださいね」

「了解〜」と右手を上げて、部屋の前の手摺りにもたれて待ってくれている田上さん。

私は、部屋に入って、慌ててうさぎちゃんたちをクローゼットに避難させるために籠に集めた。

「よくもこんなに集めたわね〜」

大きいぬいぐるみから小さいキーホルダーまで、気づけば30個ぐらいある。

これでも、一度売りに出したりして減らしたのだ。もう増やさないようにと気をつけているので、最近は購入しないようにしている。

毎日一緒に寝ている1番大きなうさぎだけは、クローゼットに入らないので、1つぐらいは良いだろうと、そのままベッドに置いておく。

そしてそして、問題は、

私の最も大切な〈田上大翔、限定アクスタ〉を

どこに仕舞うかだ。

あちこち悩んで、やっぱりクローゼットの1番上が良いなと、椅子に登ってそっと置く。

なるべく奥に入れないと背の高い田上さんなら、前から見えてしまう。

「良し! コレで良いかな」

まだ、ココに住んで1年。うさぎ以外の物は少なめだ。

あとは、空気の入れ替えをして、部屋の散らかりをサッと整えて、田上さんを迎えた。

「お待たせしました」

「お、早かったな。お邪魔します」

「狭い所ですが、どうぞ」

──うわ〜本当に推しが初来訪! まるで夢のようだ。

「おお〜シンプルで可愛い部屋だな」

「そうですか?」

──頑張って、うさぎちゃんたちは、全部避難させましたからね。

「急に来たのに、この短時間で綺麗になってるということは、日頃から綺麗にしているからだよな」

物凄い分析をされている。

「ふふ、なんだか恥ずかしいですよ」

「あ、ごめん。野郎の友達の汚い部屋で慣れてるから、つい……」と。

「なるほど、あ、どうぞ」と唯一寛げる場所であるお気に入りのソファーへと促した。

木製のフレームに、フカフカマットのようなしっかりした座面、アイボリーの色も好きだ。

たまに、ココで寝落ちしている。

「何飲まれますか? 呑み直します?」と聞くと、

「あ〜そうだなあ、ひまりは?」と聞いてくれる。

「じゃあ、酎ハイでも飲もうかな」

「あ、じゃあ同じ物を」と……

そっか、初めて来たのだから私の家の冷蔵庫に、何が入ってるかなんて知らないよねと思った。

「ビールでも買って来ましょうか?」

「ううん、有る物で。水でも良いぞ。欲しい物があるなら俺が買って来ようか?」

「あ、いえ私は、大丈夫です」

なんだこの初々しい会話は……

そりゃあ、まだお互いのプライベートな部分は、何も知らないんだもの仕方がない。

少しずつ少しずつ、田上さんのことが知れるチャンスだ!

そして、私がグラスに氷を入れると、田上さんが酎ハイと一緒に運んでくれた。

おツマミになるような物を冷蔵庫から探して、ハムやチーズ、そして、スナック菓子などをお皿に乗せた。

「何もなくて……このツマミならワインの方が良かったですね」

「ううん、大丈夫、ありがとう」

「あ、枝豆があったかと……」ともう一度キッチンへ行こうとすると、

「良いよ、座って」と手を掴まれて、もう一方の手でソファーをトントンしている。

──ああ〜それ、ソファーでの男性の仕草で1番好きなやつだよ

もう、ヘニャヘニャになりそう〜

そのまま導かれるように、田上さんの左隣りにそっと座った。

「じゃあ、乾杯しよう」

「はい」

「今日の記念日に」と田上さん

「あ、そっか」と照れながら、

「「乾杯〜!」」した。

4月22日は、私たちの記念日になった。

一口呑んで、

「あ〜旨い!」と言う田上さん

「ふふ、普通のレモン酎ハイですよ」

「いや、今日のは、格別に旨いよ」

「ふふ、田上さんって案外ロマンチストですか?」

と言うと、

「ハハッ、そうかなあ?」と照れながら笑っている。

そして、

「なあ〜ひまり!」

「はい」

「その····って言うのと、敬語、何とかならないか?」

「え、あ、そっか〜でも、ずっと田上さんって呼んでたから急には……」

大翔ひろと! って言ってみ!」

「ひ、いきなり呼べませんよ」

──ずっと推しだったんだから、いきなり本人を目の前にして、それは難しいよ。

そりゃあ1人の時は、『ひろたん』とか『ひろピー』とか勝手に言ってたけど、そんなこと言えないし……

「ほら、言ってみ」と促される。

「ヒ・ロ・ト・さ・ん?」

「ハハッ、なんで全部カタコトなんだよ!」

「え、そうですか?」

「あ、また敬語」

「あ〜1度にアレもコレも難しい! それでなくてもまだ夢の中みたいなのに」と言うと、

「そうなのか?」と驚きながらも嬉しそうな顔をする

「はい」とニッコリ笑うと、

「なら嬉しいけど、でも、····のままじゃ寂しいな」と悲しそうな目をする

──ウウッ反則!

「えっとえっと、じゃあ、ヒロさん! ヒロさんって呼ぼうかな」

「まあ、良っか、徐々にな」

「うん、ヒロさん!」

「ひまり!」

「「ふふふふ」」照れて笑ってしまう。

「やっぱ恥ずかしいな」

「うん、すっごく」

「「ふふふふ」」と笑い合う。

うわ〜私たち今、イチャイチャしてる?

ヤダ〜ふふふふ、ニヤけちゃう〜

──イチャイチャ最高! あ〜幸せ〜

そして、

ヒロさんは、私を後ろから全部包み込むように自分の前に座らせた。

──あ〜バックハグ! 最高にドキドキするんですけど……

嬉しいんだけど、恥ずかしくて、どうして良いのか分からない。

「ひまり?」

「ん?」

「俺のこと好きか?」と聞かれた。

──うわ〜ヒロさんも聞きたいのかなあ?

あ! そっか私まだ自分の気持ち、言ってないや

コレだけは、ちゃんと、顔を見て言わなきゃと思い、私は、後ろを振り向いてから、もう一度ヒロさんの隣りに座った。

真っ直ぐに目を見つめる。

カッコ良すぎて、倒れそうだったけど、その目力に負けないように、

「入社した時から、ずっと好き」と告げた。

「そうなのか?」と驚いている。

──アレ? 気づいてなかった?

「うん、初めて会った時からずっと」

「なんだ、そうだったんだ」

と田上さんは、嬉しそうに笑った。

「でも、初日に誰かが、田上さんには、会社No.1の美人彼女が居る! って言って……」

「ハハッ、それが姉貴か」

「うん、だから、私告白する前に、失恋しちゃったと思って」

「言ってくれれば良かったのに」とヒロさんは、私の頭を撫でている。

「そんなこと言えない」

「あ〜だよな、いきなり会社の先輩に彼女居るんでしょ! とは言えないよな、ハハッ」

「うん、でも諦められなくて、ならば私の··として、好きなままでいよう! って気持ちを切り替えたんです」

「え? 俺ひまりの··?」

「そう、1番の··

「それは、嬉しいなあ、俺の1番の··も最初からひまり」

「え、そうなんですか?」

──あ〜そうだったんだ! 私たち最初から両思いだったんだ

「そうだよ、ひまり! ずっと大好きだよ」と、

頭を撫でられながら、うっとりした眼差しで見つめられて、

私たちは、キスのやり直しをした。

今度は、慌てて重ねただけのキスじゃなく、優しくヒロさんを感じられる愛のこもったキス

──あ〜何コレ? 私こんなに素敵なキス、初めてかもしれない。

なんと言うか……舌が絡み合っているのに、いやらしくなくて、とても心地良い大人のキス。

ひと言で言うなら、ヒロさんキスが上手なんだと思う。

私は、堕ちた……ヒロさんのキスに……

そして、またぎゅっと抱きしめられた。

今度は、私も抱きしめ返した。

──あ〜好きだ〜

「ひまり!」

「ん?」

「大事にするからな」

「うん」

抱きしめられたまま答えた。

「あ〜このままずっと離したくない」とヒロさんは言った。

私も同じ気持ちだった。

「私も」と言った。

なぜか私はもう一度、あの素敵なキスをして欲しいと思っていた。

ハマってしまっている、ヒロさんのキスに……

だから、そっとヒロさんのカラダから離れてもう一度おねだりするかのようにジッと目を見つめる。

すると、伝わったのか、もう一度落ちて来た。

──あ〜コレコレ! 素敵〜

大胆にも、もっと〜と思ってしまうほど心地よいキス。こんなの初めてだ。

私は、何度でもして欲しいと思ってしまっていた。

そして、ヒロさんは、

「ひまり、聞いても良いか?」と言った。

「ん? 何?」と聞き返した。

すると、

「今まで、付き合った人は?」と、聞かれた。

「あ〜それは、どこから?」と聞き返すと、

「どこから! あ、カラダの関係とかってこと?」って言うので、

「うん」と答えると、

そんな聞き方をしたものだから、きっと今まで何人もの男性と……と誤解されたかなあ?

「そうだな……」と少し困ったような顔で質問を考えている。

「あ〜引かないでね?」と言うと、

追い討ちを掛けるように、また反対の意味に取られたのか、物凄い経験人数を想像したようで、かなり硬い表情になってしまった。

「違う、違う! そうじゃなくて、男性とは、数人お付き合いしたけど、皆んな可愛いお付き合いって言うか、それに短期間だったから、どこからかなと思って聞いたの」

「おお、そっか」と少しホッとしているようだ。

「あ、ややこしい言い方をしてごめんなさい。

ハッキリ言うね」

「うん」と構えているようだ。

「私、キスぐらいまでしか経験がないの! それも何もなかった人を除くと2人だけ。引いた?」と言うと……

キョトンとした顔をしてから、

「そっか」と顔が緩んでホッとしたような顔をしている。

やっぱりさっき、誤解されてたんだと思った。

どれだけ居たと思われてたんだろう。

なぜか嬉しそうに見えるのは、気のせいか?

──アレ? 良いの?

以前、処女は『面倒くさい』と言われたことがある。とても傷ついた。

だから、

「面倒くさくないの?」とヒロさんに聞くと、

「どうして?」と言った。

「あ、だって……」と口籠ると、

「俺がひまりの1番になる!」と微笑んでいる。

「もう1番だよ」と言うと、

「それは、推し1番だろ?」

「うん」

···になりたい!」と言っている。

──あ、私の···の人になってくれるんだ!

もう、こんなにトロけるようなキスをする人は、初めてだし、既にハマってしまっている私も初めてで驚いているのに、

その上、···の人になってくれるんだ。

「ふふ、そうなんだね」

「うん、だから、ゆっくり大事に進みたい。良いか?」

と……私を気遣ってくれているのだろう。

──良かった、『早速今から』と言われると、ちょっと怖いと思ってしまう自分がいたから。

「うん、ありがとう」と、また抱きしめた。

「あ、うん。ひまり! すっごく嬉しいんだけど、そんなことされると、ちょっとツラいんだよね」と言っている。

「え? どうして?」と言うと、

「いや、凄く嬉しいんだよ! でも、俺はいつでもお前を抱ける!」と、言われて少し怖くなった。

やっぱり男の人って、そうなんだと思った。

「でもな、ひまりが嫌がることは絶対にしない」

「うん」

「今日から付き合うことになって、凄く嬉しい! だから、慌てず少しずつ進みたいと思ってる」

「うん」

「でもな、男ってのは、頭とカラダがバラバラな時がある」

「え? そうなの?」

「ひまりのことを考えると、まだダメだ! と思うけど、そうやって、ひまりの柔らかいカラダとか良い香りとか嗅いでたら、カラダは反応してしまう」

そうなんだね、だから過去の人の中には、すぐにカラダを求めようとした人も居たけど、私が幼すぎて面倒くさいって、思われたんだ。

私がお婆ちゃん子で古い考えのところもあって、

『お婆ちゃんかよ!』と言われたこともある。

交際期間が短かったこともあるし、私がバリアを張ってたみたいな部分もあったから、そんな雰囲気にもならなかった人も居た。

結局、私がキスをしたのは、2人だけだ。

「うん、教えてくれてありがとう」

「うん、だから少しずつ良い関係を作って行こうな」

「うん、私のことを思ってくれてありがとう」

でも、私は思っていた。確かに頭とカラダは、違って、まだ抱かれるには早いと思っていながら、あの素敵なキスは、たくさんして欲しいと思っている自分がいる。

こんなの初めてだ。ヒロさんだからなのかな。

「あのね」

「うん」

「ヒロさんのキス、好き」

「おお、嬉しいね」と笑っている。

「こんなの初めてなの、凄く心地よくて何度もして欲しくなるの、私っておかしいの?」

「いや、凄く嬉しいよ。ひまりが俺を欲しがってくれるなんて、最高だよ!」

「そうなんだ……」と微笑むと、

「きっと俺たち相性が良いんだろうな、して欲しい時はいつでも言ってくれ」と言われて、

「して欲しい!」と、

私は、即答していた。

「おいで」とヒロさんは、優しく言って自分の膝の上に私を向かい合わせに跨がせた。

そして、ゆっくり唇を重ねて、今度は、何度も何度もついばむ

──あ〜コレも好き

少し焦らされながら、待っている私がいる。

それから、又ねっとり濃厚になっていく

──あ〜凄く心地良い、なんだか脳天までふわっとする感じ

とても心地よくて、心が満たされる感じだ。

Hは、したことないけど、Hってもっと気持ちいいのかなあと思った。

少し興味が湧いてきた。

ずっとしていられると思った。

でも、ヒロさんは、しばらくすると離れてしまう。

また私は、

「もっと……」と言っている。

──どうしちゃったんだろう私、大胆になってる? キスだけで、ヒロさんに全身を愛されているみたい。

すると、また違った型のキスをしだしたヒロさん。

少し焦らされながら、私の口の中をまるで撫でられているようになぞる舌

そして、また絡め合って濃厚な愛を注ぎ合っているみたい。

──あ〜素敵、

『溺れそう!』とよく聞くが、もう私はとっくにヒロさんに溺れている。

どうしよう、もっともっとが増えていく。

そして、また、ぎゅっと抱きしめ合った。

「今日は、ココまでにしよう!」と言われて、少し悲しくなってしまった。

「うん」と寂しそうに言ったから、

「あ、俺が耐えられなくなるからだぞ。キスして欲しい時は、いつでも言って!」

「うん」と又笑顔になった。

私たちは、色々話した。

「それと、お互い隠し事は無しな!」

「うん」

「何でも思ってることは、言ってくれて構わない」

「うん、でももし喧嘩になったら?」

「大丈夫! 喧嘩しても必ずその日に仲直りしよう」と言われた。

「うん、分かった!」

そして、私も気になっていた、ヒロさんの過去の恋愛を聞いてみた。

「ヒロさんは、今までたくさんの恋愛をしてきたの?」

「う〜ん、それこそ何処から? だけどな」と笑っている。

きっとたくさんの恋愛をして来たのだろう。

それも、大人の関係の……

そう思うと聞きたいような聞きたくないような、

複雑な思いだった。

それは、きっと私がヤキモチ妬きだからだ。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • いつもあなたのそばにいたい   第52話 仕事として

    いよいよプロジェクトが大きく動き出した。 翌日、中村さんに迎えに来ていただいて、お姉様と横浜支社へ向かった。 実際に現場の声を聞けることは、とてもためになった。 私たち本社の社員とは、違う支社特有の苦悩もあるようだし、男性、女性の格差も未だにあって、ジェンダーレス社会に向けての取り組みも見えて来た。 昔ほどではないが、未だに残るセクハラ、パワハラ、それを誰の目に触れるかも分からないようなアンケートなどには、到底書き記せない。 やはり、実際に行ってみないと、文字だけでは分からないことがたくさんあるのだとよく分かった。 行って良かったと思った。 私たちは、一応会社側から選ばれて、会社への要望を出しながら、過ごしやすい会社作りをする為に立ち上げられたのだと思っている。 なので、最初は敬遠されていた方々も、徐々に口を開いてくださるようになって良かったと思った。 私自身もとても勉強になった。 今、自分が学ぶべきタイミングだったのではないかと思った。 「あ〜疲れた!」とお姉様 「はい、そうですね。お疲れ様でした」 「お疲れ様〜珍しく真面目に話を聞いてたからね〜」 「ふふ、はい」 謙遜されているがお姉様は、人の気持ちがよく分かる、ホントに凄い方だと思っている。やはり、ヒロさんと姉弟だなと思う。 お昼は、中村さんも一緒に横浜中華街でランチを堪能した。 そして、中村さんも夕方まで同行していただいたので、お土産を買いに行こう! と又中華街へ行き、私たちは、「お疲れ〜」とビールで乾杯して、小腹が空いたので角煮まんを食べた。美味しかった。 シュウマイを買って帰った。 お姉様は、お義兄様の分も持ち帰りされてた。 「お疲れ様でした。また明日から名古屋よろしくお願いします」と言うと、

  • いつもあなたのそばにいたい   第51話 名古屋のこと

    その夜、 ヒロさんからメッセージが送られて来た後に、テレビ電話を繋いだ。 「お疲れ様〜」 『お疲れ〜! ひまり〜驚いたよ』 「うん、私も驚いたけど、嬉しい〜」と言うと 『うん、ひまりが会社に来てくれるなんて、すっごく嬉しいよ』と言うヒロさん。 「うん。どうだった? 初日は」と聞くと、 『うん、東京より人数が少ない分、みんな仲良くて、良い人たちだよ』と言う。 「そうなんだ、良かったね……」と言うと、 『うん』 『ん? ひまり何か言いたそう?』と言う。 また、ヒロさんは、私の表情を読んでいる。 「うん、女性社員さんたちは、どうだった?」と、 やっぱり、聞かずには居られなかった。 『ああ〜そういうことか』と笑っている。 『ひまりが心配するようなことは何もないよ!』と言うが、やはりそれだけでは何も分からない。 憂鬱な顔をしていると、 『全体的に年齢層が高いんだよな』と笑っている。 「え? そうなの?」と言うと、 『うん、もちろん若い子も居るけど、あ、ひまりの同期の子も居たよ、なんて名前だっけ?』 「里中さん?」 『ああ、そうそう、そんな名前だった』 「そっか、私のこと覚えてくれてるかなあ?」と言うと、 『バッチリ覚えてたよ! 部長が教えてくれて、 奥さんと同期だって』 「そうなんだ! 良かった、覚えてくれてたんだ」 入社式の時に少し話して、その日1日は一緒に行動していた。 『うん、会いたいって言ってたよ』と言われ、 「うん、私も会いたい! 入社式以来だもの。会えるの嬉しい」 『だな。あとは…

  • いつもあなたのそばにいたい   第50話 出張

    翌日の水曜日、 私は午後からプロジェクトチームの定例会議の日だった。 約束通り、朝からボディーガード付き生活が始まっている。 今日は、中村さんの弟さんの日だ。 いつものように会議室に行ってチームの女性メンバー5名でお話をする。 弟さんは、また、部屋の1番後ろに立ってくれている。参観日スタイルもそろそろ見慣れて来た。 私たちの女子チーム①は、この数回の会議で、女性社員の方々に不安に思っていること、会社に対して改善して欲しいこと、というアンケートを取ることにした。 しかし、忙しいからか、それとも面倒だからか全員分の回収は出来ていない。 もしかすると、言いたくても言えない状況だったりすることもあるのではないかと思い、目指せアンケート全員回収! と題して、全国に10箇所ある支店や事業所に手分けして行き、意見を聞きに行くことになった。 そして、その話をしていると、女子チーム②の方々もアンケートを実施したい! とのことで、ならば協力し合って、1人1ヶ所まとめる事で済むようにしようということになった。 実際には、2人1組なので、2箇所へ行くことになるが効率は良くなった。 会社側からは、出張することも経費負担もOKをいただいているので、必要経費は、好きに使って良いと言われているようだ。 ただし、安全面を考慮して2人1組での行動が原則。 そして、海外に関しては、今のところNOだそうだ。治安の良くない土地へは、行かせられないということだ。 とりあえず、海外については、回線を繋いでいただいて、聴き取り調査をさせていただくことに留まった。 「仕方がない! アンケート国内全員回収! にしましょう!」と決まった。 「「「「はい」」」」 私たちのチームのリーダーは、お姉様なのだ。 なので、私は楽しく参加出来ている。

  • いつもあなたのそばにいたい   第49話 夫への思い

    中村さんに車でマンションまで送ってもらっている間に、早速ヒロさんから、メッセージが届いていた。 〈写真見たよ〜〉と、私は嬉しくなってすぐに、 〈どうだった?〉と送ると、 〈しばらくは、コレで頑張れそう!〉と返って来たので思わず笑った。 「ふふ」 可愛い笑顔の写真や変顔、そして、セクシーな写真も撮っておいてあげたからだ。 〈今夜もひまりを思い出すよ〉と送って来たので、 〈それは、どういう意味の?〉と送ると、 ラブラブなクマちゃんカップルのスタンプが送られて来たので、 〈いやらしい〜〉と送ると、 〈夫になんてことを!〉と泣き顔のスタンプを送って来た。 「ふふ」 仕方がないから、 〈ごめんね〉チュッのキス顔写真を送ってあげた。 〈ありがとう頑張れる!〉と返って来た。 こうしていつでもやり取りが出来る。 私たちの大切なツールだと思う。 〈気をつけてね〉 〈うん、蟻に踏まれないように気をつけるよ〉と来た。 「ふふっ」 〈私も象を踏まないように気をつけるね〉と、 変な会話をする。 コレが私たちだから良いのだ。 そして、マンションに到着したので中村さんにお礼を言った。 「明日の朝もお迎えに参ります」と、 そうだった明日からは車通勤だ。 「よろしくお願いします」と、言うと中村さんは、私がエレベーターに乗るのを見届けてから、帰られる。 1人エレベーターに乗り10階を押して、部屋まで上がる。いつも先に帰っていたのだから、何も変わらないはずなのに、それは、後からヒロさんが帰って来てくれると思って

  • いつもあなたのそばにいたい   第48話 出発の時

    昨日は、毎日一緒に居られる最後の日だった。 朝から電車で一緒に出勤して…… それも、もうしばらくは出来ない。 入籍してから、たった1週間しか一緒に通勤出来なかった。 ──2年お預けか…… もう誰にも遠慮することがなくなったのに…… 夕方ヒロさんは、現場から早く会社に戻って来てくれたので、帰りも一緒に帰ることが出来た。 そして、最後の夜を一緒に過ごした。 「明日から1人か……」とポツリと言ってしまった。 そのせいで泣きそうになったので、ヒロさんに抱きついて我慢した。 なのに、ヒロさんは、 「ひまり、我慢しなくて良いから」と、私がずっと泣かないように我慢してるのを分かってくれていたから、抱きしめてそう言ってくれた。 すると、今まで我慢してたものが一気に込み上げて来て、ついに涙腺が崩壊してしまった。 「ウウウッ、うあ〜〜〜〜んっ、ウウウッ」 ヒロさんは、私をぎゅっと抱きしめながら、ずっと私の背中を摩ってくれていた。 「ごめんな……寂しい思いさせるな」と…… 「ウウウッ、ヒクッヒクッ」と、子どものように、しゃくり上げながら泣いてしまった。 もちろんヒロさんのせいではない。 一緒に行かないと、自分で決めたことだし…… 分かっている。でも、抑えることが出来なかった。 こんなにも涙って流れるものなのかと思うほど、次から次へと溢れ出ては流れた。 「あ〜離れたくないなあ〜」と言うヒロさん。 分かっていても、出てしまう言葉。 ヒロさんも我慢しているのだ。 「ウウウッ」その言葉に、また泣いてしまう。 「我

  • いつもあなたのそばにいたい   第47話 帰宅

    夕方、東京駅に到着すると、中村さんが待っていてくれた。 「え?」 「お疲れ様でした」と車で迎えに来てくれたようだ。 私は、知らなかった。 「中村さん、ありがとう」とヒロさん。 「ありがとうございます」と私も言う。 「お願いしてたの?」 「うん」と笑っている。 「毎回戻られる時は、東京駅までお迎えにあがりますので、名古屋へご出発の時も送迎させていただきます」と中村さん。 「ありがとうございます」 東京駅から車で30分程だ。 送っていただき、中村さんにお礼を言った。 「ありがとうございました」 「ありがとう! 明日は、ひまりと出勤して一緒に帰るから大丈夫です。明後日からお願い出来ますか?」と言うヒロさん。 「かしこまりました」 その言葉に、鼻がツ〜ンとして、危なかった。 ヒロさんが東京最後の日だ。 明後日の朝、車で一緒に送ってもらう。 私が慣れる為、車での送迎の練習だ。 午前中で引き継ぎと挨拶を終えると、ヒロさんは名古屋へ行ってしまう。 なので、私も半休を取って一緒に東京駅まで中村さんに送ってもらうことにした。 刻一刻と迫っている。 今、泣いちゃダメだ。 「ありがとうございました、よろしくお願いします」と2人でマンションの中へ入る。 明らかに、私が落ち込んでいるのを察するヒロさん。 そう言えば、山田に『お前、分かりやすいなあ』といつも言われているから、全部顔に出てしまっているのだろう。 なので、敢えて私は、にこやかに、 「今日の晩ご飯は何にする?」とヒロさんに聞く。

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status